初代正楽は一宮長常や大月光興と共に京都金工三傑に数えられる高名な金工であり、岡本源兵衛敏行と称し、工名は尚茂、正楽は後年入道剃髪してからの号銘である。素材は主として鉄を用い、その技巧の高さには定評がある。
 本作は長閑な田園風景の中に鉄元堂らしく農夫を巧みに配して彫り上げ、金、銀、素銅の象嵌色絵を得意の鉄地に施すなど、写生力に富んだ優品である。
 尚、銘は初代の青壮年期に用いた尚茂で、印銘を使わずに花押が添えられている。